arasawa (2016年05月30日)
〔税務〕〔不動産〕
~相続対策としてのアパート建築からその後のお話~
- 営業マンからのアプローチ
「相続税対策でアパートを建てませんか?」「借入をしてアパートを建てると相続対策になりますよ!」と飛び込み営業の方が訪ねてこられたことはありませんか?
なるほど、相続対策にもなり、家賃収入が入ってこれば言うことなし、管理もすべてやってもらえて余計な手間もかからない。すべてその通りになれば言うことはないですよね。
しかし、その横には大きな落とし穴がぽっかりと空いているかもしれません。
実際にその落とし穴にはまり、大事な土地を借金の返済に手放してしまうケースも少なくありません。
でもあなたは、「いや、あの営業マンは人として信用できる、だから絶対大丈夫だ!」
と仰るかもしれません。
はい、その通りだと思います。あなたと信頼関係を築いた方であれば、立派な営業マンに違いないでしょう。
でも、本当に大丈夫ですか?
その優秀な営業マンの方、どこまで相続税法を理解されてご提案されているのでしょう?
会社のマニュアルに従って上手に説明しているだけかもしれません。
もちろん嘘をついているつもりもないでしょう。
- そしてアパート建築
アパートを建築することを決心したあなたは、「借入をすると、その分相続財産から差し引けるから相続対策になるんだよね?」と考えていませんか?
実は少し違います。
アパート建築前と比べてみましょう。
あなたには建物建築費用として金融機関から借り入れた借入金(マイナス財産)と建築したアパート(プラス財産)ができました。
このアパートの評価額は通常建築金額より低くなります。
この建物評価額と借入金残高との差額があなたの相続財産を減らす効果なのです。
その効果が最大なのは、建物を建築した直後です。
年々建物評価額は低くなっていきますが、同時に借入残高も減少していきます。
一方で建物の家賃収入が入ってきますので、借入返済額より家賃収入が多ければ、以前より生活レベルを上げない限り現預金は増加していきます。
通常の相続対策の考え方とは真逆に、あなたが長生きすればするほど相続対策の効果は薄れていきます。
アパート建築による相続対策はタイミングが非常に大事なのです。
営業マンがあなたにアパートを建ててほしいタイミングが、あなたにとって最適なタイミングではないことはご理解いただけたかと思います。
- アパート経営
そしてピカピカの新築から10年が経過しました。
あなたが思い切って建築したアパートもようやく借入も少なくなり、収益の目途が立つようになってきました。
ほっとしているあなたに突然管理会社から連絡が入ります。
「そろそろ外壁や屋根の塗装修繕工事の時期です。見積もり金額は○百万円です。」
建築を検討していた頃、修繕工事の計画について説明を受けていたはずが、建築を決意してからそのことがすっかり頭から抜け落ちていたあなたは驚き、そんなお金ありません!と断ります。
すると、「修繕しないと家賃保証ができない」とか「契約を打ち切る」とか「家賃をさげてくれ」うんたらかんたら・・・
そしてあの十分に信頼関係を築いていたはずのあの優秀な営業マンはどこに・・・。
どうしてこんなことになるのか、管理会社側に立って考えてみましょう。
当初10年は修繕等のトラブルや滞納等の問題を起こす入居者も少なく、管理にほとんど手間がかからないものです。管理会社にとってこれほど楽なことはありませんよね。次に水回りや外壁が古くなると、その修繕費で管理会社は稼いでいきます。
更に築年数が古くなると入居審査も甘くなり、トラブルも増えてきますので、管理のうまみがなくなってきます。
このタイミングで管理会社から建て替えを勧められたり、家賃保証を切られたりすることもあります。
一番手間がかかり大変な時期に、これではあんまりですよね?
管理会社任せで収益が上がるほど世の中甘くはないですよね。しっかり検討しましょう。